映画「シークレット・ミッション」の裏話

日韓交流イベントに参加した。

韓国映画監督のチャン・チョルス(장 철수)氏も参加されて、映画鑑賞とトークイベントがあった。同監督が撮ったシークレット・ミッションは、ゆるやかに始まり、だんだんスピードをあげていき、最後は足の代わりに心が震える、ジェットコースターのような映画だった。

この映画を撮ったきっかけは、主役であるキム・スヒョン側からオファーがあったことや、脇役として登場するチェ・ウシクは監督自身がキャスティングし、デビュー作だったのでとても緊張していたことなど話してくれた。また、冬の寒い中の撮影だったので、俳優さんたちが、暑いお湯に浸かりながら寒さを凌いだことなど、いろいろな裏話を聞けて面白かった。

トークイベントのなかで、どんな監督を目指しているかを問われたとき、彼が師事したキム・ギドク監督は、明るさの中に暗さを取り入れるタイプの監督だったけど、自分は暗い世界の中に一筋の光があるような作品を創る監督でありたいという内容の話しをされていた。(あくまでも私の受け取り方ということをご了承願いたい。)

シークレット・ミッションは、正に、その思いが現れている映画だったと思う。それぞれの国や人に立場があって、良い悪いは一概に言えない。自分にとっての正義が、相手にとっては逆で有り得る世界で、敢えて同じものを探すなら、誰かを大切に想う気持ちではないだろうか。安易には選択できない未来と、抗うことの出来ない状況のなかで、駄目だと分かっていながら知らずに芽生えた感情と、抑えようとしても勝手に動く気持ちに、必死に向き合う姿に、心を動かされ、気がついたら涙が溢れていた。

エンディングは各々が感じたままに捉えて欲しいとのことなので、是非この映画を観て、各々のエンディングを思い描いて欲しいと思う。

済州島(1)とチ・チャンウク

行ったことがある場所がドラマに出てくると、それだけでも親しみが湧いてくる。

「サムダルリへようこそ」は、主演が、面白いこと間違いなしのチ・チャンウクとシン・ヘソンだということに加え、昨年訪れた済州島が舞台ということもあり、観るべくして観たドラマだった。

済州島で約1週間お世話になった韓国人の友人の両親の家の近くに、ロケ地としてよく使われる、海の中にいくつもの風車が建っている場所がある。今回のドラマでも頻繁に出てきたので、毎回懐かしい気持ちになったし、チ・チャンウクやシン・ヘソンがそこを通るシーンでは、思わずでテレビ画面を写真に撮ってしまうほどだった。私が行ったとき、ちょうど海にゴミを捨てないでという活動をしている方たちがいて、交流できたことも思い出のひとつになっている。

今回のドラマで、チ・チャンウクは、気象予報士という役だった。よく考えると、彼には、イケメン俳優にありがちな、御曹司やイケメンツンデレ上司という役が思い当たらない。平凡というと弊害があるかもしれないが、一般市民として日常を懸命に生きる役が多い気がする。

昨今はイケメンという言葉を簡単に使いすぎている気もするが、敢えて言うくらい、彼はかなりのイケメンであると思う。一般的に、イケメン俳優というだけで、注目度が高く、視聴者の期待値や求められるハードルが高い。また、見た目のイメージが強いと、本人の存在を払拭できない場合は、ドラマの役柄として素直に入ってこないことがある。

その点、チ・チャンウクには、演技に、視聴者を納得させる、イケメンという概念を超えた説得力がある。今回のドラマでも、人間味溢れる演技で、ドラマの世界に引き込んでくれた。あの、少し憂いを含んだような表情と、包み込むような温かい笑顔には、気が付かないうちに、人を魅了する力がある。

イ・ドンウクに落ちた理由

誰かに落ちた時の症状は、相手が恋愛対象でも、俳優やアイドルでも、同じではないだろうか。どちらも、昨日まで、いや、ともすれば、ついさっきまで何とも思っていなかった人が、急に気になりだして、その人のことばかり考えてしまうようになる。

今は最推しの存在となったイ・ドンウクも、始めから推していたわけではない。

最初に知ったきっかけはトッケビというドラマで、死神役として登場し、「人間離れした雰囲気をもつ人だな」「死神役にピッタリだな」と思った覚えはあるけど、それ以上ではなかった。

その後、韓国語に興味を持ち始め、ルームメイト2というバラエティ番組を観たときに、落ちてしまった。その沼に。堂々としていながら偉そうというわけではなく、親切なのに媚びているわけでもなく、常に自然体で、かつ、さりげない気遣いが垣間見えて、こんな人になりたいと思ったのがファンになったきっかけだった。

画面のこちら側にいる身としては、究極、良い演技を見せてもらえば、演じ手が本当はどんな人かどうかは、ベールに包まれたままでも構わない。それでも、良い人だったら嬉しいし、言うことはない。もちろん、ルームメイト2も、リアリティ番組とは言いながら、テレビに映る仕事だから、もしかしたら全て演技の可能性もあるけれど、それでも、落ちてしまったものはしょうがない。

それから、イ・ドンウクが出ているドラマや映画などを探して見るようになった。好きになる前と後では、作品を観るときの熱量も変わるから不思議だ。「真心が届く」では、イ・ユンナとのケミも最高で、既婚の身ではリアルで味わうことのないドキドキやトキメキをたくさん感じさせてくれたドラマだった。

そして、PRODUCE X 101で、国民プロデューサー代表として出演したときに、さらにファンになってしまった。まず、年齢不詳なビジュアルから溢れ出る大人の魅力に、これまで以上に心を奪われた。服装、歩き方、表情管理、姿勢、態度、どれをとっても、自然体なのに完璧で、文句のつけようがない。加えて、発言する際も、相手を傷つけないよう、言葉や言い方に配慮しながら、言うべきことや思ったことは、はっきりと伝える姿勢を見て、ああ、ステキだな、やっぱりこの人のようになりたいと、改めて思った。

韓国の俳優さんは、どの俳優さんも演技力や意識が高く、ドラマを観るたび推しが増えて忙しいけれど、1番好きな俳優さんはと聞かれたら、躊躇なくイ・ドンウクと即答する自信がある。まだ1話しか観ていなくて、全容が掴めない状況だけれど、ディズニーチャンネルで配信中の「殺し屋たちの店」で、どんな新しい一面を観せてくれるのか、楽しみにしているところだ。

イ・スヒョクの存在感

「ある日、私の家の玄関に滅亡が入ってきた」を見終わった。

主役の2人(ソ・イングク/パク・ボヨン)は然ることながら、印象に残ったのは、パク・ボヨンの上司役のイ・スヒョクだった。

氷の王子という表現が似合いそうな 、一見冷たく端正な顔立ちのイ・スヒョクから発せられる、低く深い声は、耳から入って脳をめぐった後、そのまま消えることなく次は心に落ちてきて、そして静かにフェイドアウトしていく、そんな感じだった。

通常、どんなドラマのどんなセリフでも、入ってきてすぐに消えていくものなのに、あの背中がぞくっとするような魅惑的な声は、画面を飛び越えて、こちら側を制圧する力を持っていた。

イ・スヒョクは、以前観た、「ウチに住むオトコ」や「ナイショの恋していいですか!?」にも出演していて、それぞれハマり役で存在感はあったけれど、主人公を巡る三角関係に巻き込まれる役だと、どうしても主人公を応援してしまうので、これまでその魅力を認めようとしなかった自分がいる気がする。

今回は、主人公を巡る三角関係には巻き込まれず、想っている相手と成就する可能性がある役だったことも、その存在を認め、客観的にその魅力を捉えることができたポイントの一つかもしれない。

人前では常に冷静で、取り乱した姿を見せることなく、必要最低限の言葉しか発しないのに、想う相手の前だけでは甘さを見せるというのは、ツンデレの王道で、恋愛ドラマでも欠かせない要素ではあるけれど、今回のイ・スヒョクは、ツンとデレ、冷たさと甘さの振り幅が大きく、その独特な声も合わさって、私の心は大きく揺さぶられてしまった。

もちろん、ドラマ本編も面白いし、主演の2人も、期待を裏切らない演技でドラマの世界に引き込んでくれた。

ソ・イングクは、もはや固体でもない、現象である“滅亡”という難しい役を、違和感を感じさせず、かつ、とても魅力的に演じているし、パク・ボヨンも、見ている側が共感したり、共に泣いたり、笑わせてもらったり、見た目の可愛らしさとは裏腹に、しっかりした女優の貫禄を魅せてくれている。

このドラマも、見終わった後に、見終わった達成感と、もう続きを見られない寂しさを感じる、記憶に残るドラマの一つになった。

次は、イ・スヒョクが主演のラブコメを是非創ってもらいたいと、強く願っている。

元旦のインフルエンザ発症に思う

2024年の元旦は、病院でインフルエンザの陽性判定を受けることから始まった。

発熱が午後だったため、病院に着いたのは15時くらいだったのに、まだ続々と患者が押しかけている状況だった。朝から医師4人体制で対応しているけど、とても追いつかないという状況で、検査をして結果が出たのは19時近かったと思う。事務の方も医師の方も疲れ果てていたはずなのに、一人一人に真摯に対応してくれる姿勢に頭が下がった。ゾフルーザを処方され、薬を飲むタイミングが良かったのか効き目が早く、前回罹患した時は約5日間くらい高熱と身体の痛みに悩まされたのが嘘のように、次の日には熱も下がり、身体も楽になった。

2日の夜に旦那が発熱。自分にインフルエンザの薬が効いたこともあり、少しでも早く薬をもらおうと、3日の朝イチに当番病院に行ってみる。予想通り、既にたくさんの患者さんが来院していた。順次外で受付するとのことで、入り口の前で待つ。次は私たちの番だと思ったら、事務長のような男性の方が出てきて、迷惑そうな顔で、後は電話で受け付けるので、ここで待たないで電話してと、半ば追い返されるように病院を後にする。その後は、もちろん、100回以上電話したけど繋がらず、この日の最寄り当番医はそこだけだったので、この日の診察は諦める。

4日にはかかりつけ医が診療を開始したので、検査して薬を処方してもらえたけれど、それまで熱を下げるとんぷく薬も効かず、40度近い熱が出続けて、とても不安だった。インフルエンザなどの薬は、診察を受けなければ処方してもらえない。今回のように、祝日や休日に発症した場合、その日の当番医に見放されたらどうすることもできない。その時に思ったことがある。

コロナワクチン接種のために、行政は、何箇所も場所を借りて、たくさんの人を雇い、郵送代を使い、症状がない人のための無料の抗原検査場も長期間設置されていた。もちろん予防や混乱を防ぐことも大切だと思う。コロナが特異な状況だったことも分かる。それでも、予防にそれだけの予算を使うなら、コロナやインフルエンザに実際に罹患した人が、少しでも早く検査を受けられるよう、祝日や週末に検査場を設置することはできないのだろうか。体調の悪い人が何時間も待たされることなく、検査場で素早く検査を受けられて、必要な薬を処方してもらえる、そんな体制を整えることはできないのだろうか。ITが進んでいる今の世の中、何か方法はあるんじゃないかと、そんなことを思った。

素人考えは重々承知しているけれど、今年は思ったことを伝えたり発信していく年にしたいと思っている。